アール・デコの粋『邸宅の記憶』 東京都庭園美術館

こんにちは。
インテリアデザイナーの小林由梨奈です。

東京都庭園美術館で期間限定公開されている、『邸宅の記憶』展に行ってきました💫

欅・黒檀・花梨の寄木床が美しい第一応接室

1933年に朝香宮家の本邸として竣工した建物を活用した美術館。

この頃に世界中で流行していたアール・デコ建築が日本で花開いた事例を今日に伝えるものとして、重要文化財に指定されています。

毎年異なるテーマで期間限定公開されている旧朝香宮邸ですが、今年は美術館の開館40周年ということで、宮邸時代の家具や調度を用いた邸宅空間の再現展示がされており、当時の生活の一端を感じることができる内容でした。

私は上京したばかりの頃にこの美術館を見つけて、よく1人で遊びに行っていました。

さっき収納の整理してたらちょうどその時やってた展示のポストカード出てきた。

2013年春の「森と芸術」展のポストカード
ロゴも好きだった🌳

都会の真ん中の、大きな木の生茂る小さな森みたいなのの中にある、アール・デコ様式の邸宅。
広大な敷地の美しい庭園に囲まれた、癒しのスポット。

正面玄関と大広間の間のガラスレリーフ扉
大広間側からみたガラスレリーフ扉

正面玄関を入ると目の前の壁面いっぱいにラリックのガラスレリーフ扉が。
大広間側から見ると外からの自然光を感じ、女性像に後光がさしているようでとても美しい✨

アール・デコを代表するフランスのガラス工芸家、ルネ・ラリックの作品が、まるでラリック美術館のように全館にふんだんに使われています。



邸宅の記憶

旧朝香宮邸は宮内省内匠寮が設計、主要な部屋のインテリアはフランスの室内装飾家アンリ・ラパンがデザイン。

宮内省内匠寮は宮内省(現・宮内庁)内にあった組織で、皇室建築や儀式に使用する建築の設計・監理をしていました。そのうち造営の実務にあたる工務課は、さらに建築係・土木係・庭園係・機械係と別れていて、それぞれの係に100人以上の人々が所属してこの邸宅の造営に関わっていたそう。

想像を絶する規模ですね。
さらに1つ1つの置き家具や調度品がすべて超弩級の逸品です。

いったいどれくらいのコストがかかったのか未知すぎます🤗

旧朝香宮邸平面図

私は昔の洋館と昔の洋館の平面図フェチなので、これを見るだけで興奮します💓

森博嗣のS&Mシリーズとか。
毎回丁寧に平面図が出てくるミステリー小説🤣

とくに『夏のレプリカ』が好き。
何度も何度も読みました。建築と数学とミステリーが情緒的に好きな方にはとてもおすすめです。

数学ってなんであんなに尊くて切ないんでしょうね。



大広間

こちらが正面玄関の先に続く大広間。
さっそく目を惹く調度品が現れます。

小袖 紅縮緬地菊尾長鳥の丸文様刺繍

允子妃が結婚前に着用されていたもの。

自由でのびのびとした草花や鳥のモチーフが鮮やかな朱赤の地の上に遊んで、楽しい気持ちになる、縁起の良さそうな小袖ですね🦜❣️

釉下彩藤花文大花瓶

朝香宮夫妻がフランス滞在中にフランス大統領から贈られた花瓶。国立セーブル製陶所で製作された一対のうちの一つ。

朝香宮の鳩彦王は、軍事研究のためにフランスに滞在していたところ交通事故に遭い、看護のためにやってきた允子妃と共に、図らずもフランスに長期滞在することになりました。

その偶然がきっかけで、当時世界で大流行していたアール・デコの旋風を本場で体感することになり、その経験がこの邸宅を建築する動機になったそう。

いくらお金があったとしても、半端な気持ちではつくれない建物です。
とっても強く熱い想いを胸に、帰国されたんだと思います😍



大客室

朝香宮邸の中でも1番アール・デコの美が集結しているのが、こちらの大客室と、大客室から続きの間になっている大食堂。

大客室の壁面の上部は、内装を手がけたアンリ・ラパンが描いたもの。

森の中の庭園の情景が描かれています。

すごく素敵だし、これどこかでこのまま商品化してないかな。着彩していくらかカラバリ展開してたら使ってみたい。

大広間と大客室をつなぐ次室(つぎのま)は、モザイクタイルの床、黒漆の柱、オレンジ色の人造石の壁でつくられた気品高く豊かな色使いの空間。

真ん中にそびえ立つ香水塔も、アンリ・ラパンの作品。

これも青い花瓶と同じく国立セーヴル製陶所で製作され、フランス海軍より朝香宮家に寄贈されたもの⚓︎

上部の照明内部に香水を施し、照明の熱で香りを漂わせたという由来から、香水塔と呼ばれるようになったそう。アロマディフューザーみたいな使い方ですね。

そもそもビジュアル自体、それこそ箱根のラリック美術館にたくさん展示されているような、香水瓶のよう。大きな香水瓶みたいで可愛い💓

大客室には他にも美術品がたくさん、、

ラリックのシャンデリア
マックス・アングランのエッチングガラス扉

エッチングガラス扉の上部のドーム型の部分は、レイモン・シュプによるタンパンという装飾。

1つの開口部に、著名な作家2人の作品を混合させるスタイル。贅沢で貴重✨



大食堂

こちらの空間も、目に入るすべてが美術品。
窓の外の緑が、気高い芸術品にも引けをとらず麗しい大食堂。

実はよく見ると、魚や果物などの装飾がされていてとても可愛いんです😍

宮内省の職人のつくった窓の下のラジエーターカバー。

ひょうきんな顔をした魚がキュート🐠💓

ルネ・ラリック

ラリックの天井照明にも、フルーツがぎっしり🍇🍍🍅

レオン・ブランショ 壁面レリーフ

ボルドーの彫刻家・画家、イヴァン=レオン・アレクサンドル・ブランショによる壁面レリーフ。

フランスから到着した当初はコンクリート製だったけど、移動の負荷でヒビが入っていたため、日本で型をとって石膏で作り直し、銀灰色の塗装をして仕上げられたもの。

妃殿下はレオン・ブランショに水彩画のレッスンを受けていたそう。

レイモン・シュブ サイドボード

ロートアイアン、オニキス、ガラスを使ったサイドボード。

オニキスが家具に使われてるのを初めてみました。かっこいい🖤

レイモン・シュブはアール・デコを代表する鉄工芸家。豪華客船や多くの建築の内装を手がけ、朝香宮邸に携わったあとはパリ万博で巨大なファサードも発表した人らしいです。



2階のプライベートスペースへ

第一階段

大広間には2階に続く豪華な階段が。

外国産の3色のビアンコカララと日本の木材を組み合わせたり、アール・デコの象徴的なジグザグの中に組み込まれたいぶし銀の装飾がどこか和風だったり。

1階を「フランスのアール・デコ」、2階を「日本のアール・デコ」のコンセプトでつくった空間は、この第一階段によって綺麗につながれていました。

昨日たまたまテレビで見た徳川家広さんが降りてた階段の装飾が、ちょうどこのジグザグデザインでした。あれは家なのかどこなのかわからないけど、きっとアール・デコ階段なんですね。

ブロンズ製銀いぶし仕上げの装飾
青海波のラジエーターカバー

2階には日本の紋様も使われていたり、「日本のアール・デコ」を体現していて素敵でした💓

そして、朝香宮家のプライベートスペースへ。

アンリ・ラパン設計の殿下居間

高いヴォールト天井の空間。天井の圧迫感が少なくて素敵。ここで会話するとどんな風に響くのかな。

付け柱はヒノキ。柔らかい木なのに、本当に保存状態がよかったです。

クロスとカーテンは、フランスのデザイナー、エドゥアール・ベネディクトゥスによるデザイン。

現存する端切れや、竣工当時の写真をもとに、つい9年前に復原されたところだそうです。

今見ても可愛いし、エッジの効いたデザインながらシックな色なので、いろんな空間にマッチしそうですね😍

アンリ・ラパン設計の書斎

書斎は、正方形の部屋の四隅に飾り棚を設置することで円形に見せた空間。

外観は完全に四角なのに、内観(特に天井)は丸くなっていて、いいなこういうのやってみたい😎と思いました。

机、椅子、電話台、カーペットまですべてアンリ・ラパンの設計。

妃殿下居間

妃殿下の居間は明るいナチュラルシックな空間。

殿下の居間に比べてだいぶ浅めの ヴォールト天井も、優しいムードを醸していますね。

1枚ものの大きな鏡や造り付けの棚も、芸術や装飾に造詣の深い妃殿下のこだわりが詰まっています❣️

5つのボールをつなぎ合わせたような天井照明と天井装飾も可愛い。

南側の窓の外は半円形のバルコニーになっていて、美しい庭園と深い緑の木々が気持ちよく見晴らせます。

妃殿下居間のバルコニータイル
バルコニーの泰山タイルの展示

バルコニーのタイルは昭和初期に名を馳せた名建材の泰山タイル。
バルコニーに足を踏み入れることはできませんが、実際のタイルを手にとって触ってみることができるよう、用意されていました。

発色がとても鮮やかですね☺️

妃殿下はご自身でも絵を描いたりデザイン画を描いたりされる方で、寝室には可愛らしい作品が展示されていました。

妃殿下の手描き絵葉書
暖房カバーも妃殿下デザイン

このライト可愛い😍
なんとなく、星のやにありそう🌿

ご夫妻それぞれの寝室からのみ入室できるベランダと、ご夫妻の寝室をつなぐ廊下にある第一浴室。

南側ベランダ
第一浴室

そしてその廊下の1番奥には、姫宮の寝室。

可愛らしいお部屋ですね☺️
木材にはサクラを使っています。マントルピースやカーテンに桜色を使っていて、ブルーを基調とした水泡模様のクロス。

春の感じのする空間です。春生まれだったのかな。

天井照明にはガラスではなくロウ石を使っていて、優しく柔らかな光が降り注ぎます。

個人的には、このメダリオンみたいな天井彫刻のデザインがすごく好き💋

北側のベランダ

北側のベランダは「北の間」と呼ばれ、暑い季節の家族団欒のスペースに使われていました。

天窓から自然光を採り込むことで、屋外にいるような明るく開放的な空間に。

北側の部屋は暗くなりがちですが、こうすると明るくていいですね☀️

柱はチーク材。すべて柾目で統一されていてとても美しい。

寒色の冷たいタイルを使うことで、視覚的触覚的に涼の効果を。

腰壁のタイルは、櫛引で並行の溝を入れたスクラッチタイル。

大小の布目タイルを敷き詰めた床面と差をつけて、空と森に馴染む同系色でまとめながらもリズミカルで楽しいデザイン。



屋上のウインターガーデン

屋上には温室としてつくられたウインターガーデン。

大きな市松模様の床壁デザインがインパクト強く、目をひきます。
壁は国産の大理石だけど、床は人造大理石だそう。

でも言われてみないと全然気づかないくらい、自然な人造大理石でした。
今だと普通だけど、当時ならこんなに似せてつくるのはきっと今より難しかったんじゃないかな。

ウインターガーデンに続く廊下の床。

これはただタイルの補強のために上からクリアな材を乗せてるのかな?これ、すごい可愛かった💓



新館では秘蔵品公開も

新館では朝香宮家伝来品に加え、国内各地に所蔵されていて、今回の「邸宅の記憶」展のために里帰りしてきた衣装、工芸、調度など稀有な作品もたくさん公開されていました🤗

この展示に合わせて修復を完了した家具
アンドリース・コピール《ガラス製大花瓶》

ボンボニエールたち
《複葉機形ボンボニエール》 1932年

ずっと好きだったけど、こんなにまじまじと建物を見せていただいたのは初めてで、なんか照れました☺️

見どころの満載の『邸宅の記憶』、6月4日(日)まで開催中です❣️

新緑の季節に、美しい森と邸宅で過ごす時間は心地よくて素敵ですよ🤗🌳



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プロフィール

インテリアデザイナー 小林由梨奈
Euphoria Design代表

京都市出身。鎌倉市在住。天秤座。O 型。
特技は 3 歳から続けているクラシックバレエ。 趣味は温泉、海外旅行、ホテルと美術館巡り、ドライブ、お酒、歌うこと、踊ること。読書、舞台・映画・ライブ観賞。同志社大学在学中、NHK 朝ドラなどに出演。その他映画出演や、情報番組の司会アシスタントを務める。 大学卒業後、一部上場企業に就職し上京。営業、アプリ開発ディレクション、商品企画、広報、社内外研修企画、 小学生向けキャリア教育プログラム企画・運営などの業務に携わる。2016年、イメージコンサルタント業務を開始。クライアントのイメージづくりやカラーセラピー講座をする中で、インテリアデザインに興味を持つ。町田ひろ子アカデミー在学中にインテリアコーディネーション業務を開始。卒業後、Euphoria Designを立ち上げ現在にいたる。

Instagram: @yur_in_a

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